世界の食卓

08Aug06

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世界の食卓(TOTO出版)

世界24ヶ国の30家族をそれぞれの一週間分の食料と共に撮影した写真集.著者は米国の報道写真家Peter MenzelとジャーナリストのFaith D’Aluisio.

世界各地の家族を訪ね歩き,すべての家財道具を撮影した「地球家族」を出版後,インドネシアのジャングルで狩猟採集生活を営む原住民を取材した折に,食糧不足に悩む現地の子供がインスタントラーメンを乾麺のままかじっている姿にショックを受け,世界の食料事情を写真で表現する試みを始めたという.

Project Phonethicaでは,音声の偶然の近似を媒介に世界の多様性にアクセスする仕組みを構築している.なぜ音声をPIVOTにするのかと言えば,それは,音声が人類における最も普遍的な事実の1つだからである.文字を持たない民族は現在もなお存在するが,話し言葉を持たない民族は未だかつて一度も現れていない.生成文法の提唱者チョムスキーによれば,音声言語は生得的な能力であるが,読み書きはいかなる人も,意図的な訓練によって習得しなければならない.

この写真集で扱われている「食」もまた,人間の基本的な営みである.食べ物を摂取せずに生きながらえる民族は当然のことながら存在しない.

というような事をつらつらと考えながらこの写真集を眺めているうちに,ロラン・バルトの「明るい部屋」(みすず書房)の一節を思い出した.曰く,

『ある写真のプンクトゥムとは,その写真のうちにあって,私を突き刺す(ばかりか,私に痣をつけ,私の胸を締めつける)偶然なのである』

言語を主題とするプロジェクトを推進する際のジレンマは,言語というものが言語化できないものを常にその外へとはじき飛ばしてしまうということである.

写真というメディアが時に起こす奇跡とは,この,言語によってはじき飛ばされた諸々の事象を捉えることにほかならない.

この辺りのことをもう一歩踏み込んで考えてみることで,Phonethica Webの情報表現設計に何か突破口が開けるかも知れない.

遠藤拓己


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