2002年にヨーロッパに移住して以来テレビを持たない生活を続けていたが,2005年にベルリンに滞在した際にはアトリエにテレビがあったので,仕事の合間によくBBC Worldを見ていた(他にはキャプテン翼をドイツ語吹き替えで放送していたのでこれでドイツ語を習得しようと試みていたのだがほとんど上達しなかった).

BBC Worldで特に好きだったプログラムは「HARDTalk」で,ホストを務めるStephan Sackurによる国家元首クラスのゲストへの知的且つ攻撃的なインタビューの技には大いにシビれた.このような番組を可能たらしめているBBCというメディアのあり方に興味が高じ,当時あちこちの書籍を濫読した.さてでは日本のNHKはどうなっているのかと気になった時にAmazon.co.ukから購入したのがEllis Kraussの「Broadcasting Politics in Japan : NHK and Television News」(2000)であった.今回ついにその全訳が日本国内でも出版されたので,ここに紹介したい.

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カルフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・太平洋研究大学院教授の著者による本書は,戦後日本の民主主義体制成立の謎をNHKのテレビニュースの詳細な分析により考察したものである.NHKの生い立ち,先進諸国の国営・公共放送との差異,NHK内/外の政治的状況までを冷静かつ大胆な構想力で論じているばかりではなく,戦後日本の政治と放送のダイナミックなインタラクションを,多種多様な文献研究を通じて得た膨大且つ緻密なデータを基に解析しており,良質なノンフィクションとしてばかりではなく,学術書としても充分な信頼を獲得している.ジャーナリズムやマスメディアのあり方に関心のある向きはその後のNHKの改革に関する論議のあれこれを思い出しながら読み進めると大変面白いだろう.

以下に本書の目次を記す.

第1章 NHKと放送の政治
第1部 政治をめぐる放送
第2章 国家はどのように描かれているのか
第3章 夜7時のニュースの舞台裏 - ニュースはどう作られるか
第2部 放送をめぐる政治
第4章 NHKはいかにしてNHKになったか - 組織と環境
第5章 NHK会長の人事と政治
第6章 NHK記者の職務と政治
第7章 政治圧力からの脱却はなるか - ニューメディア戦略と組織改革
第8章 ニュースステーションによる挑戦
第9章 政治をめぐる放送と放送をめぐる政治

「NHK vs 日本政治」エリス・クラウス著.村松岐夫,後藤潤平翻訳.東洋経済新報社

遠藤拓己


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