Archive for January, 2006
年末からプロトタイプの制作が始まったPhonethica Installationの作業の進捗状況を交換すべく,Technical ContributorのMartin Richesと氏の自邸にてミーティングを行った.
事前に受け取っていたメールでは,依頼していた作業の成果が思ったほど出ていないのでくれぐれも期待しないように,とのことだったが,素材別のテストやサウンドシステム(?)のモックアップの実現はもとより,これまでのアイデアを逆手に取っての新たな記録方法の提案など,わずか数週間の間とは思えない素晴らしい仕事ぶりに改めて尊敬の念を抱いた.
こちらからは,東京へのフライト中に思いついた音環境についてのアイデアと最新の開発方針を伝えたほか,国内外各方面との打ち合わせ状況についての報告を行った.
Martin Richesとの仕事で格別に楽しいのは,素晴らしいタッチのスケッチノートを本人の解説付きで見せて頂くことである.了承を得たものについてはすべてスキャニングさせてもらっているので,おりをみてこのブログでも公開したいと考えている.
ちなみにMartin Richesは私の父と同い年らしい.職人気質を地でいくこの英国人Perfectionistとの協働は,めちゃくちゃエキサイティングである.
遠藤拓己
Introducing “Phonethica” #1
もう一度Phonethicaについて整理してみます。
Phonethicaは「言語と文化の多様性に音をキーワードに迫る」ことを目的としたアートプロジェクトで、そもそもはアーティストの遠藤拓己さんが、2003年前後から構想を温めてきたものです。現在、IPA未踏ソフトウェアの資金援助を受け、遠藤さんと私の二人で制作に取り組んでいます。僕自身は、ソフトウェア開発全般とインタフェースのデザインを2005年の6月から担当しています (それまでのいきさつはこちらに書きました)。
Phonethicaとは何か、基本的な考え方は単純です。一言で言うと「世界の様々な言語の中から、似たような音を持つ単語をたくさん集めたらどうなるか?」ということになります。
そもそもこのプロジェクトを始めたきっかけはフランスでの日常生活の中にありました。フランス語の会話で非常に頻繁に使うフレーズとして、”ça va?” (サヴァ?)という挨拶があります。「元気?」といった意味の言葉なのですが、日本人の耳には “サバ?” つまり”鯖?”に聞こえませんか? 実は他の言語にも「サバ」という似たような発音を持つ単語があります。サバは、ロシア語では「フクロウ」、インドネシアのタバ語では「丸太」を意味するそうです(それぞれ厳密に言うと全く同じ発音ではありませんが)。今、この瞬間、東京の誰かがスーパーで「サバください」と言っている一方で、地球の裏側のパリの街角では、「サヴァ?」「トレビアン!」とビズしている人がいるわけです。そして、インドネシアでも…
というところで詰まってしまいました。「タバ語」? 僕はこのプロジェクトに参加するまで、恥ずかしながらタバ語という言語の存在すら知りませんでした。果たしてどんな人たちが話しているのでしょう? その人たちはどんな文化を持っているのでしょう? たった一つの「サヴァ」という音から、その音を持つ単語を含む言語、さらに言語の背景にある文化や地理などに想像が広がりました。これがまさにPhonethicaプロジェクトが目的とするところなのです。
抽象的なことばかり話していても仕方ないので、開発中の画面から簡単な例をお見せします。
ここでは、日本語の「平和」という単語に似た音を持つ単語がネットワーク上に表示されています。たとえば、ホームシック、郷愁という意味のオランダ語 “heimwee” (ヘイムワ)が、平和のすぐ近くに表示されていますね。さらに、上の方には、”haywire” (めちゃくちゃなという意味の英語 ヘイワイア) →「兵隊」というリンクも見えます。平和から、英単語を一つはさんでまったくイメージの異なる兵隊という単語につながっているというのが面白いですね。これらはすべて辞書の中の発音記号を基に、独自に開発したアルゴリズムで音の類似度を算出しているだけなのですが、なにかしら詩的なものを感じさせます。
もう一つ別の例として、「戦争」という単語の例をお見せしたいと思います。(戦争と”sense of being”が面白い)
以上、Phonethicaの理念と開発中の画面をお見せしました。まだまだ問題が山積しているのですが.. .それはまた次回書くことにします。
東京からベルリンに戻った翌日,TUでのレクチャーで知り合ったキュレーター,Angelika Escour氏とミーティングを行った.TUで紹介したPhoenthicaアプリについてもっと詳しく知りたいとの連絡を年末に受け,遠藤の帰独を待ってアトリエを来訪してくれた.
ミーティングでは,プロジェクトで現在進行中のソフトウェア開発とインスタレーションについてはもとより,それら”以外”の展開の可能性についても激しく議論した.いやはや,キュレーターとはなんたる職業か...続けてドイツにおける現代美術の動向についても率直な意見を交わしたのち,2月に予定しているTransmedialeのオープンスタジオでの再会を約して終了.
その後は東京でのミーティング内容の整理や業務連絡,関連案件のソートアウトなどを行ったほか,ここのところあえてプライオリティをさげていたいくつかの業務の重要性を再確認し,明日からの作業バランスの見直しを行った.また,不在中に送られてきていた香港での展覧会に関するコントラクトをチェックした.
遠藤拓己
Project Phonethica
Combining scientific technology and art, Phonethica is an interdisciplinary project which explores the diversity of the world, through the phonetics of its 6,000 languages.
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